【叡智の詩学】
批評家の小林秀雄と哲学者の井筒俊彦の相通ずるところを論じたもの。
同じものを観、同じことを語っていた。
井筒俊彦が若い時、アラビア語やイスラームを学んだ師にムーサーがいた。
このムーサーという大学者(ウラマー)がとてつもない人物だったようだ。
p.53
「神学、哲学、法学、詩学、韻律学、文法学はもちろん、ほとんどのテクストは、全部頭に暗記してある。だいたい千ページ以上の本が、全部頭に入ってしまっている」(20世紀末の闇と光)
ウラマーとは大学者のことで、学者は文献に頼らずとも、どこでも学問が出来なくてはならないとムーサーはいった。書物がなければ学問が出来ない。それではカタツムリではないかといって笑ったという。
井筒俊彦の妻が井筒豊子。
中央公論社から小説集が一冊出ている。
その中の一編に、バフルンヌーン物語があるが、井筒と思しき主人公の青木とムーサーとのやりとりが書かれており興味がつきない。
その他の作品も読ませる「白磁盒子」、古本屋でもなかなか見かけない本。