【服飾の読本】
NHK朝のドラマ「とと姉ちゃん」のモデルである大橋鎮子が出版した本。
発行は、衣装研究所
花森安治の処女作。
暮らしの手帖に連載していたものをまとめたものだ。
装幀が素晴らしい。タイトル文字、名前の位置も良く考えてある。
発行が、昭和25年。私の手にあるのは、8月1日の第4刷。初版が7月25日。
内容は、服飾についての具体的なアドバイスやおしゃれのポイントなどが中心だが、戦後の貧しい時代にあってもおしゃれを楽しむ余裕や美しいものを感じる感性が大切であるということを謳っており、暮らしの手帖に流れている基本そのものだ。
本文中の見出しを拾うとだいたいの本の内容が分かるかと思う。
美しい感覚が光る時代
美しいものと高価なものと
美しいものに誘惑される
飾りすぎるな
一番いいものばかりつけたがらぬこと
ほんとうの美しさ
美しく着るための勉強とは
美しいものを見分ける感覚
わざとらしさについて
おしゃれを軽蔑するおしゃれ
スカラシップ好きは感覚が低い
女学校の制服について
おしゃれ狂女にさせたのは誰か
通学服は花のように
女学校の先生の服
粋と上品と
個性とは欠点の魅力である
すきのない身だしなみ
ひとに似合えば自分に似合わぬ
自分に似合うデザイン
自分の服のデザイン
ここまでで、約30頁。全体の1/7程だ。
ざっと眼を通していて、はっとした一文。
ただ、一つのもの
現代の発達した美容術、整形術でも、なんとしても、お化粧出来ない場所が、人間には一ヵ所だけある。それは、眼の光りである。
本の奥付。
花森安治らしさが出ているのが、左端の文字。
本を担当した、職人の名前が入れてある。
全てが花森安治の信念と美意識に貫かれている。