内田洋子さんの最初の「ジーノの家 イタリア10景」に感心してから新刊が出るのを楽しみにしていた。
これは、単行本を見送り、文庫本なるのを待っていた。
期待に違わず、ぐいぐいと読ませる。
きびきびとした文章は、著者の人となりも反映しているようで、内田さんに引き寄せられるように登場する人物が実に魅力的に見える。筆の力というよりも、人の懐に飛び込む力のなせる技なのかもしれない。今までの作品にあった人物主体に少し料理を加え、味付けをしてある。
トマトをざく切りとか、採りたてのバジルをすり潰すといった文章がおどり、荒っぽくはあるが、その文章だけで口中にトマトを放り込まれたように唾液が出て来る。
これを読んだ幾人かの夕餉はパスタになったはずだ。